或いはそれは夜の女王
例えるならば、それは魔性
白い肌は絹のよう
靡く髪は黒檀のよう
弧を引く笑みは柘榴の実
射抜く瞳は零下の瞳
満月の夜にざわざわと
新月の夜にじわじわと
蜘蛛のように忍び寄り
絡めたものは離さない
すなわち、それは
例えるならば———
「———魔女だ。」
「なんですって?」
伏せていた瞼をあげて、早夜子はスクエアへと言葉を返した。
平日の、客も疎らな喫茶小夜曲。耳にできる音といえば、ささやかに流れていた有線の音楽と、グラスが擦れる僅かな硬質音。
その、或は静寂ともいえる空間を割いたスクエアの声は、余りにも意外な、そして唐突なものであった。
「いや。」
心地よい音楽と、唇を濡らすその液体と、なによりカウンターに佇むその女の存在の所為であろう。
物思いに耽っていたスクエアは、その思考が無意識に口をついて出ていた事に気付き、思わず口角を引き上げて含み笑いを零した。
「何、この世で二番目に良い女の話さ。」
いまいちスクエアの思惑が読み取れない早夜子は、僅かに柳眉を顰める。
もっとも、もとより彼は唐突に何か思わしげな事を呟く人間であった。しかし、今日のそれは、何時にも増して、真意が掴めない。
小夜子は、その断片的な言葉の意味を理解する事を諦めて、もう一つの疑問へと問いをかえしてみた。
「………一番目は、じゃあ、誰なの?」
「……さあな。」
スクエアは、ぶっきらぼうに言葉を吐いて、煙草の先に火を灯した。
じり。微かに紙と、乾燥した葉が燃える音が耳に届く。
早夜子はそこで、問いただすことを諦めた。
ふ。
紫煙が小夜曲の、空に、舞う。
例えるならば、それは魔性
白い肌は絹のよう
靡く髪は黒檀のよう
弧を引く笑みは柘榴の実
射抜く瞳は零下の瞳
満月の夜にざわざわと
新月の夜にじわじわと
蜘蛛のように忍び寄り
絡めたものは離さない
すなわち、それは
例えるならば———
「———魔女だ。」
「なんですって?」
伏せていた瞼をあげて、早夜子はスクエアへと言葉を返した。
平日の、客も疎らな喫茶小夜曲。耳にできる音といえば、ささやかに流れていた有線の音楽と、グラスが擦れる僅かな硬質音。
その、或は静寂ともいえる空間を割いたスクエアの声は、余りにも意外な、そして唐突なものであった。
「いや。」
心地よい音楽と、唇を濡らすその液体と、なによりカウンターに佇むその女の存在の所為であろう。
物思いに耽っていたスクエアは、その思考が無意識に口をついて出ていた事に気付き、思わず口角を引き上げて含み笑いを零した。
「何、この世で二番目に良い女の話さ。」
いまいちスクエアの思惑が読み取れない早夜子は、僅かに柳眉を顰める。
もっとも、もとより彼は唐突に何か思わしげな事を呟く人間であった。しかし、今日のそれは、何時にも増して、真意が掴めない。
小夜子は、その断片的な言葉の意味を理解する事を諦めて、もう一つの疑問へと問いをかえしてみた。
「………一番目は、じゃあ、誰なの?」
「……さあな。」
スクエアは、ぶっきらぼうに言葉を吐いて、煙草の先に火を灯した。
じり。微かに紙と、乾燥した葉が燃える音が耳に届く。
早夜子はそこで、問いただすことを諦めた。
ふ。
紫煙が小夜曲の、空に、舞う。
PR
———まあ、あらあら…大変。
まったく、派手にやったものね、カーペットが台無しではないの。
———え、いいえ?怒ってなんかいないわ。
やってしまったことは仕方の無い事よ。気になさらないで。
…そうね、それでも。無闇に人を殺してしまうのは良くないわ。
……あら、違うわ、そういう意味ではなかったの。
気を悪くしたのなら謝るわ。ごめんなさい。
ねえ、だから、そういう物騒なものは下げて頂戴。
……そう、そうよ。良い子ね。
―――よくって?人を殺すとその分だけ呪われるのよ。
そんな、呆れたような目でわたくしの事を見ないで頂戴。ねえ、話しを最後まで聞いて?
人は死ぬと永遠となるの。
届かないものとなるのよ。
死んだ想い人以上の人間が現れる事は無いし、
死んだ英雄以上の英雄は現れないわ。
ええ、勿論貴方が今殺したそれが、英雄だなんていわないわ。
けれど、人を一人殺すということは、
己には到底敵わないものを、到底叶わないものを一人、増やすという事よ。
そうして死体が増える度、己を奈落へと突き落としてゆくのだわ。
……あら、退屈だったかしら?
そう、そうね、貴方には関係のない話しだったわね、ごめんなさい。
それでも、そう、もし、自分を奈落へと突き落としてしまったと、
そう、感じてしまった日が来たのなら。
ねえ、わたくしの元へいらっしゃい。
お祝いに、お酒の一杯くらいは、ご馳走してあげるわ。
まったく、派手にやったものね、カーペットが台無しではないの。
———え、いいえ?怒ってなんかいないわ。
やってしまったことは仕方の無い事よ。気になさらないで。
…そうね、それでも。無闇に人を殺してしまうのは良くないわ。
……あら、違うわ、そういう意味ではなかったの。
気を悪くしたのなら謝るわ。ごめんなさい。
ねえ、だから、そういう物騒なものは下げて頂戴。
……そう、そうよ。良い子ね。
―――よくって?人を殺すとその分だけ呪われるのよ。
そんな、呆れたような目でわたくしの事を見ないで頂戴。ねえ、話しを最後まで聞いて?
人は死ぬと永遠となるの。
届かないものとなるのよ。
死んだ想い人以上の人間が現れる事は無いし、
死んだ英雄以上の英雄は現れないわ。
ええ、勿論貴方が今殺したそれが、英雄だなんていわないわ。
けれど、人を一人殺すということは、
己には到底敵わないものを、到底叶わないものを一人、増やすという事よ。
そうして死体が増える度、己を奈落へと突き落としてゆくのだわ。
……あら、退屈だったかしら?
そう、そうね、貴方には関係のない話しだったわね、ごめんなさい。
それでも、そう、もし、自分を奈落へと突き落としてしまったと、
そう、感じてしまった日が来たのなら。
ねえ、わたくしの元へいらっしゃい。
お祝いに、お酒の一杯くらいは、ご馳走してあげるわ。
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
リンク
ももこ
かずのこさん
レッドさん
SATORUさん
柚己さん
山高帽子さん
日向さん
光岡さん
うさぎさん
イノウエさん
悠乃霧依さん
とーきさん
兼成さん
(^p^)さん
10さん
しずたにさん
ゆだいらさん
ありんコさん
MOYOさん
かんさん
佐治さん
英さん
チョさん
GSさん
カラクリさん
木神さん
すざきさん
atriさん
紙さん
anubisさん
猫万堂さん
かずのこさん
レッドさん
SATORUさん
柚己さん
山高帽子さん
日向さん
光岡さん
うさぎさん
イノウエさん
悠乃霧依さん
とーきさん
兼成さん
(^p^)さん
10さん
しずたにさん
ゆだいらさん
ありんコさん
MOYOさん
かんさん
佐治さん
英さん
チョさん
GSさん
カラクリさん
木神さん
すざきさん
atriさん
紙さん
anubisさん
猫万堂さん
フリーエリア
最新トラックバック
プロフィール
HN:
sheena
性別:
女性
自己紹介:
pixiv内企画、ぴく悪について
駄文を連ねたりするブログ。
基本的に遅筆。
駄文を連ねたりするブログ。
基本的に遅筆。
ブログ内検索
アクセス解析